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JMWが考えるこれからのULクッカーに必要な幾つかの条件

「JMWが考えるこれからのULクッカーに必要な幾つかの条件」

Hillbilly Pot 550をデザインする上で1番最初に決めたコンセプト。
それはガス缶、コンパクトなシングルストーブ、小型のライターがクッカー内にスタッキング出来る事。
ガスストーブはMSRのコンパクトタイプ・シングルバーナー「Pocket Rocket 2」をベンチマークとし、「ヒルビリーポット550」の中に110mlのガス缶とポケットロケット2、そして小型ライターが入る最小サイズに設定。ガス缶クッカーのスタッキングセットとして、もっともミニマムなサイズです。

「ハンドル無しの理由」

ヒルビリーポットにはハンドルが有りません。これはオールドスクールのULハイキングシーンでは良く行われていた軽量化のTipsの一つ。

引き算のデザイン

利便性を求めて機能を追加していけば便利になっていく、と言うわけでもなく、逆に使い方の自由度が下がってしまう結果になってしまう事もあります。
取手が無くても手拭いや小さな革切れでポットをリフトさせる事が可能であるし、ツルッとした形状は他のクッカーやカップとのスタッキングが生まれたり、アストロフォイルなどを使ったクージーの自作もイージーであったり。
このハンドルレス・クッカーは僕がULに出会って衝撃を受けたスタイルでもありULギアの一つの象徴だと思っています。

ヒルビリーポットをアルミで作った理由」

今、アウトドアショップのクッカー売り場にならぶバックパッキング用のULクッカーは殆どがチタン製品だったりします。しかしそのシェア率だけを見てアルミ製品がチタン製品よりも劣っている、という訳ではなく、チタン製品にはチタンの、アルミ製品にはアルミの良さがあります。
アルミはチタンと比べて熱伝導率が優れています。鍋底の一点で受けた熱エネルギーを素早く鍋肌から鍋全体までに効率良く伝える事ができます。

炊飯の時。

それは固形燃料を使用した”ものぐさ炊飯”であっても、鍋底の温度に偏りがなく、炊き上げる鍋底全体で熱するアルミのおかげでお米の焦げ付きが付きにくく均一に炊き上がりやすくなります。

残雪期の雪山ハイクの時。それは雪を溶かして水を作る時。

熱伝導率の低いチタンクッカーでは良くある「鍋底付近は熱くても鍋の側面から上部は冷たいまま雪を溶かす事が出来ない」と言った状態があります。しかしアルミクッカーだと熱伝導率の良さから鍋全体を温めスムーズに雪を溶かして水を作る事ができます。

お湯を沸かす。もしくはインスタントラーメンを作る時。

少ないエネルギーで効率良く湯を沸かします。もちろん、煮炊きの場合でも一度沸騰させた後は極弱火でも煮汁の沸騰をキープする事が出来きます。

そんな熱伝導率に優れるアルミ製品ですがウィークポイントもあります。それはチタンと比べて柔らかい、という事です。チタンに近い強度を出そうとするとかなり厚いアルミ板を加工しなければならず、クッカーの重量がチタン製品の倍近い150g前後の製品になってしまいます。強さを出すには厚く重い製品になり、軽さを求めると薄く弱い製品になってしまいます。

ヒルビリーポットはULクッカーとして強度と軽さのバランスを追求し、製作工場と協力し3つの厚さのアルミ板を検証し、2つの厚さのサンプルを製作。その結果、ULクッカーとして100gを切る軽量であり最低限の強度が出せる0.8mm厚のアルミ材を採用する事にしました。

その鍋底0.8mmの厚さはチタンクッカー(主に0.3mmや0.4mm)の鍋底に見られる歪み防止の為の円状段差を無くし、鍋底はフラット形状にしました。歪みが出にくいであろう、アルミ製品としてギリギリの薄さです。このフラットな鍋底は食事後の掃除のし易さやにも貢献しています。

「ヘラ絞り」

ヒルビリーポット550は「ヘラ絞り」という工法でつくられています。厚さ0.8mmのアルミ板を籠手とヘラを使い、オイルを馴染ませ、陶芸のろくろの様に絞り上げて形状を作り出していく工法です。

ヘラから伝わる素材の形状を確認しながら絞る力を加減しなければなら無い為に、機械化する事が難しく、現在においても熟練工が必要不可欠であり、未だ高精度加工に用いられています。
そのヘラ絞りの技術によりヒルビリーポットは

「鍋底を厚底に、側面は軽量化の為に薄く」

という鍋底が厚いテーパーデザインになっており、これは殆どのクッカーで用いられる大量生産向きのプレス工法では難しく、ヘラ絞り加工だから可能な素晴らしい技巧の一つでもあります。

飲み口の形状はプレス工法で作るクッカーに多いロールエンド形状ではなく、末端をロールさせてからラッパの様にエッジを立たせた後に短くそして小さくフレアさせています。このエッジな飲み口形状は注いだ時の湯切れの良さを生むデザインにしました。

※ヘラ絞りでの製作動画をyoutbueのJMWチャンネルにアップしました。

How to make a JMW Hillbilly Pot 550「ヘラ絞り」ver. (YouTube Mix)
https://www.youtube.com/watch?v=0JxcA35UpAk

Hillbilly Potはシンプルなアルミ製のULクッカーです。様々な火器や五徳とも親和性が高く、調理を手助けする。そして軽量、シンプル。Hillbilly Pot550は古くて新しい、これからの時代の、そしてあなたにとっての「ULクッカーのベンチマーク」になれたらと考えています。

歪んで黒く煤けてキズだらけになるまで使い倒してください。それが Hillbilly Pot550の本望です。
ヒルビリーポットに反映される、その高度な加工技術は神奈川県川崎市にある金属ヘラ絞り加工専門の製作工場である今野工業(株)の熟練工の技術によって一つ一つ手絞りで製作しています。

※Hiklbilly Pot 550にはカーボンフェルトのシートが付属しています。サイズをトリミングしてホッチキスで止めて貰えば鍋掴みクージーとして使用できます。ささやかなMYOG体験をお楽しみ下さい。

※Hiklbilly Pot 550は様々なシーンでの使用を想定してデザインされたシンプルで軽量なアルミ製クッカーです。
使用していく上で、歪み、キズ、ヘコミ、焚火の煤汚れに黒ずみ等が発生する場合があります。ご了承お願いします。